
和工房 包結 京都教室「水引の会」2月の教室で結んだ作品をご紹介します。

白い水引で表現したレース。
ヴェネツィアンレースは、15〜16世紀にヴェネツィアの街を発祥として発展したレースです。ヴェネツィアはニードルレース(針を用いて糸だけで作られたレース)発祥の地の一つと言われています。

ルネサンス期のヴェネツィアでは、金銀糸や絹糸を使った刺繍が贅沢禁止令で規制されていました。職人たちは、白一色の糸でいかに美しい装飾を生み出すかに創意工夫を凝らし、ヴェネツィアンレースを高度に発展させたのだそうです。


日本では、奈良時代に唐からもたらされた、仏舎利(お釈迦様の遺骨)を収めたガラス製の壺「白瑠璃舎利壺」と、それを包む「舎利容器 方円彩糸花網」というレースが唐招提寺に所蔵されています。鑑真和上が唐から携えてきたと伝わっており、その時代の東アジアにレースがあった事に驚かされます。
ご興味のある方はこちらで画像を見られます。 >唐招提寺2010プロジェクト

こちらは水引レースのポーチ。
森田が出席したイタリアでの結婚式でプチギフトとして贈られたものを再現しました。

右が実際に森田が贈られたレースのポーチです。
小さなお菓子を入れて贈れば、特別なプチギフトとなりそうですね。

さりげないラメが入った白い水引で結んだピアス。
耳元で揺れるたびに、ヴェネツィアンレースを思わせる上品な輝きが目を引きます。

ヴェネツィアのシンボルとして街の至る所で目にする、翼のある獅子を水引で立体的に表現しました。
獅子が携える本には平和や知恵などの意味が込められており、ヴェネツィアの守護聖人である聖マルコのシンボルです。本の広げられたページには「PAX TIBI MARCE EVANGELISTA MEUS(我が福音書記者マルコよ、汝に平安を)」と書かれています。
獅子のモチーフは世界中で見ることができますが、実際にライオンが生息しない東アジアでは、インドや中央アジアを通じて仏教とともに獅子のイメージが伝わり、仏教美術や神獣の造形へ発展していきました。例えば「狛犬(こまいぬ)」は、ライオンから発想された唐獅子がモデルになっています。
文化圏によって獅子がどのような形で登場しているかを見比べると興味深いです。

2月末から3月初めまでの2週間にわたって開催される、ヴェネツィア・カーニバルのマスクをミニチュアサイズで結んでブローチに仕立てました。
1162年、アクイレイアの総大司教との抗争の勝利を祝った祭りが発祥の起源と言われるヴェネツィア・カーニバル。華やかな衣装と、表情を隠すための仮面文化は、身分や階級の差を超えて自由に楽しむ精神の表れでもありました。

「Volto(ヴォルト)」と呼ばれるフルマスク。白いデザインが多く「幽霊」の意味を持つともいわれます。目の周りを黒く塗り、仮面の下から肌の色が見えにくくすることで、ほぼ完全に匿名性を保つことができます。

こちらも人気の高い猫をモチーフにしたマスク。
愛らしい見た目と対照的に、猫がヴェネツィアの街で古くからネズミの被害を防ぐ大切な役割を担ってきたことなど、街との深い関わりを思い起こさせる逸話もあります。
ヴェネツィアでは、身分を隠して自由になり、華やかなカーニバルを盛り上げる要素として仮面が用いられます。一方、日本でも芸能や神事をはじめ、さまざまな場面で面が登場します。
同じ「仮面」という存在でも、国や地域、歴史や文化の違いによって意味づけやデザイン、使われ方が異なるのが、とても興味深いですね。

2019年「世界の行事をむすぶ水引の会」アイルランド・ハロウィンの回で結んだこうもりのアイマスクも、仮面繋がりでひさしぶりに登場しました。こちらは実物大なので、実際に身につけていただく事もできますよ。