和工房 包結 ブログ

シルクロードをむすぶ水引の会「奈良・飛鳥」正倉院, 干支, しめ飾り

和工房 包結 京都教室「水引の会」11月、12月の教室で結んだ作品をご紹介します。

水引で結んだ宝相華(ほうそうげ)。
宝相華は、蓮や牡丹、唐花など複数の花の要素が融合して生まれた、仏教美術を代表する装飾文様です。
シルクロードを通って西方から東へと伝わり、中国・朝鮮半島を経て、日本では飛鳥〜奈良時代の寺院装飾や工芸に多く見られるようになりました。

こちらは「サマルカンド」の回で結んだ装飾タイル。
どちらも あわび結びのバリエーションを用いて結ばれています。
文化や文様がシルクロードを通して連なり、形を変えながら受け継がれてきたことを感じます。

こちらの宝相華はリバーシブルになっていて、どちらの面も素敵なんですよ。

こちらは立体的な宝相華。
複数の色を重ねて用いることで、この世には存在しない花の美しさ、現実を超えた調和を表現しています。

奈良時代、東大寺の正倉院に伝わった宝物には、当時の国際色豊かな意匠が数多く残されており、「正倉院はシルクロードの終着点」という言葉が語られる背景にもなっています。

和工房 包結ではご祝儀袋などで長年お馴染みのモチーフ、松喰鶴(まつくいづる)。
鶴が松の小枝をくわえた吉祥文様で、鶴も松も長寿やめでたさの象徴として古来より好まれました。

松喰鶴文様の源流には、ササン朝ペルシャ(3〜7世紀)に起源をもつとされる「花喰鳥(はなくいどり)」文様の伝播を見ることができます。
花喰鳥とは、枝や花をくわえる鳥の意匠。「シルクロードをむすぶ水引の会」では、5月の「ペルシャ」の回で登場しました。

そこからシルクロードを経て中国へ伝わり、さらに日本へと届いた文様が、平安時代の和風化を経て松喰鶴へと変化したと考えられています。

小ぶりなサイズの松喰鶴のリース。
華美になりすぎず、お正月やお祝いの席に、さりげなくおめでたい雰囲気を添えてくれます。

水引の会では毎年年末に登場する干支飾り。
来年2026年の干支である午(うま)の干支飾りはこちらです。
商売繁盛や招福の象徴として親しまれてきた「福助」から着想を得たデザイン。かみしもを着け、行儀良く座る姿が可愛らしい、その名も「馬助」。

和工房 包結公式ショップにも登場していますよ。
(販売しているものは、赤い敷物が座布団ではなく毛氈(もうせん)風になっています)

干支飾 馬助 和工房 包結オンラインショップ

古くから馬は、勝利・出世・力強さ・繁栄・行動力を象徴する縁起の良い存在とされてきました。
福を招く福助の意匠を重ねることで、新しい年に福を呼び込み、前向きな一歩を後押ししてくれる願いを込めています。

馬助のデザインの元になった福助。
商売繁盛や招福の象徴として親しまれてきました。

水引で結んだ春駒。春駒は、張り子などで馬の頭の形をつくり、下に車を付けて子どもが引いて遊んだとされる、古くから伝わる玩具です。
藤原時代の中世の詩集にも名が見られることから、その存在自体は非常に古いものと考えられていますが、現在私たちが思い浮かべるような「馬の頭+車」という形に定着したのは、江戸時代頃とされています。

「駒」という言葉は、もともと子馬・若い馬を意味し、そこから小さくて手元で動かせるもの、遊びの道具全般を指す言葉へと広がっていったのだそうです。

ヨーロッパにも古くから馬や車輪を組み合わせた似た玩具や図像があり、地域や時代は異なっても、人々が同じような発想を共有してきたことがうかがえます。

伝統的な「ホビーホース」で遊ぶ子供(デンマーク)

また、12月の教室では上記の作品に加え、水引で結んだ様々なしめ飾りも登場しました。

森田江里子は、日本各地に伝わる伝統的なしめ飾りのかたちを参照し、水引で再解釈して結んだ作品も多く制作しています。
こちらは、水引で結んだ馬のしめ飾り。馬のかたちのしめ飾りは、東北地方をはじめ各地で見られます。
紅白の水引で結んだ二頭の馬が、伝統的なモチーフにどこかモダンな表情を添えています。

こちらは、九州地方を中心に見られる鶴のしめ飾りをもとに、紅白の水引で結んだもの。
長く受け継がれてきた民俗的な造形に、日本独特の美意識が感じられます。

長寿や繁栄の象徴として古くから親しまれてきた亀も、しめ飾りでよく見られるモチーフです。
とくに長く生きた亀は背や尾に藻をまとった姿から蓑亀(みのがめ) と呼ばれ、しめ飾りでは稲穂を使って長く伸びる尾のような表現が見られます。
水引で結んだ稲穂を尾に使って仕上げた亀のしめ飾りです。

これにて2025年の京都教室「シルクロードをむすぶ水引の会」は終了いたしました。
11月・12月は奈良・飛鳥をテーマに、シルクロードを通って日本にもたらされた文様がこの地でどのように受け取られ、再解釈され、日本独自の表現として育まれていったのかをあらためて辿る時間となりました。

森田江里子のメッセージです。

「宝相華は、これまでも何度も結んできたモチーフでした。
今回、サマルカンドをはじめとするシルクロードの文脈を辿りながら結ぶことで、そのルーツがはっきりと見え、イメージが一気にクリアになったと感じています。
宝相華が、どこから来て、どのように形づくられてきたのか。
『シルクロードでつながっている』という実感を、手を動かしながら改めて理解することができました。

花喰鳥が松喰鶴へと変化していった流れも、知識としては以前から知っていたことでしたが、あらためて結びながら辿っていくことで、その連なりをより身体的に感じることができたように思います。
これまでは、知識として点で知っていたものが、シルクロードを結び続ける中で、一本の線としてつながっていきました。

結ぶという行為を通して、文様や文化の記憶が立体的に立ち上がってくる。
そんな実感のある時間でした。」

そして、2026年の京都教室のテーマは「にほんの時代をむすぶ水引の会」 です。
縄文から令和まで時代をたどりながら、水引でむすびの美を紡ぎましょう。

シルクロードをたどりながら、文様や結びが国や文化を越えて伝わっていく、地理的な旅をしてきた2025年。
2026年は日本を舞台に、縄文時代から令和まで、時代ごとの美意識や祈りに目を向けながら、水引を通して時間を結ぶ旅へと向かいます。

新たな一年も、皆さまと水引の旅をご一緒できることを心より願っています。

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